株式会社ニチレイの施策から「全社員DX教育推進のポイント」を学ぶ【Aidemy Businessユーザー会】

2023年6月30日、16回目となるAidemy Businessユーザー会をオンラインで実施しました。今回は、Aidemy Businessをご導入のうえ、全社のDX教育を推進されている株式会社ニチレイ 情報戦略部DX推進グループの儘田敬一(ままだ けいいち)様にスピーカーとしてお越しいただき、社内での取り組みや運用方法などを講演いただきました。様々な業種から40名あまりのユーザー様が参加し、Aidemy Businessのリアルな運用事例にじっくりと耳を傾けました。質疑応答も活発に行われ、非常に有意義な会となりました。

講義内容から質疑応答まで、イベントレポートをお届けします。

組織運営は「攻めのDX」と「守りのIT」をバランスよく

儘田様:

ニチレイグループは一般的によく知られている冷凍食品を中心とした加工食品事業をはじめ、低温度帯のロジスティクス事業、水産畜産事業、バイオサイエンス事業の4本柱の事業会社から成ります。サプライチェーンの川上から川下まで幅広くカバーできる「総合力」を強みに、「地球の恵みを活かしたものづくりと、卓越した物流サービスを通じて、豊かな食生活と健康を支え続ける」というビジョンのもと、2030年までの長期経営戦略を敷いており、今は「デジタル・データを中心としたDX」に注力するフェーズに入っています。

グループのビジョンから逆算して2021年に策定したニチレイグループのDX戦略は「従業員一人ひとりがごく当たり前にデータ・テクノロジーを使いこなし、地球と人々に新たな価値を提供し続ける」というもの。中でも特徴的なのは、「攻めのDX」と「守りのIT」のバランスを重視し、ひとつの部署の中に共存させた組織作りを行っている点です。私が所属する情報戦略部は、ニチレイグループ全体の取締役会の直下、情報統括責任者のもとにあります。また事業会社でもDXとITがひとつになった部署がある形です。

社長が率先してDX研修を受講したことが社員のモチベーション向上に

儘田様:

「従業員一人ひとりがごく当たり前にデータ・テクノロジーを使いこなす」ためには、会社全体をデジタル人材に育成する必要があり、全社的なDX研修を行っています。研修はピラミッド型になっており、社員はまずDXに興味をもち、必要性を知るための「DX講座」「管理職研修」を履修します。このコンテンツの肝は、なんといっても代表取締役社長の大櫛からのメッセージ動画です。実は弊社で最初にAidemy BusinessのオンラインDXラーニングを修了したのは大櫛でした。その社長が「みんなでDXを始めよう」とトップダウンで声をかけたことは、非常に社員の心に響きモチベーション向上につながったと見ています。

実際的な学びの第一段階は「DXブロンズ」ランクで、Aidemy BusinessからDX概論的なエッセンシャルな5講座約10時間をセレクトしました。国内全正社員3,500名の必修となります。期間は3か月で、意欲がある社員はより多くの講座を受講できるシステムです。これがなかなか好評で、2024年度までに全員で順番に受講する予定が前倒しで進んでおり、2023年度で全員修了しそうな勢いです。

そのような中、次の「DXシルバー」ランクを目指したい人員を募ったところ、800~900名の手が挙がっています。実に約4分の1でして、我々事務局としては500名くらいかなと見込んでいたのでこれは嬉しい誤算でした。シルバーではより実践的に「デジタルで変えよう」「データで変えよう」といった集合研修と併せ、Aidemy Businessで法律やセキュリティ、デジタル技術について学びを深めていきます。

さらに上が「DXゴールド」ランクですが、こちらは2023年の下半期から実施予定です。さらに実践的な業務への落とし込み、他部署とのDX連携などを組み立てられる人材の育成を少人数・対面の長期的な学びから目指します。シルバーおよびゴールドランクの修了者から、各部署で現場のDXを牽引する「デジタルリーダー」を選任したいと考えています。現状では、選抜メンバー向けの「データサイエンティスト育成プログラム」などを用意しています。

人事部と連携し、事業会社ごとに人材定義・評価を設計

儘田様:

前向きにDX研修を進めてもらうためのモチベーション維持の仕掛けも工夫しています。講座受講数の分布図を公開し、自分の立ち位置がわかるようにしています。また、タレントマネジメントシステムの個人公開ページにひとつ枠を追加して、DX認定のランクを表示する仕組みにしました。

4つ異なる事業の会社がありますので、突き詰めるとDXの進み方のプロセスやレベルもそれぞれ違いがあり、完全には一致しません。情報戦略部から必ず押さえてほしい点を伝えたうえで、各事業会社がそれぞれある程度の裁量をもって特色を活かした人材定義をし、評価をしていることが、グループ全体のDX教育がうまく進んでいる理由かと思います。いずれにしても、人事部と緊密な連携をとり、各事業会社によりフィットする洗練された人材定義を練り上げ、さらに丁寧に評価に反映できたらと考えています。

社内コミュニティ運営でDX推進活動を活性化

儘田様:

そのほか、社内ネットワーク上にDX推進の場として、ITのニュースやDXの事例紹介などに特化したポータルサイト「デジラボ」を開設しています。その上でTeamsに「デジラボチャネル」を作成し、月に1~2回セミナーを配信しています。アイデミーの石川社長や、Aidemy Business講師の中山ところてんさんなどによるDX/ITに関するセミナー配信を行っ ています。このTeamsは2000人以上が参加する非常に大規模なグループでの取り組みです。

最近、その中でも特にDX化に興味をもつ社員を募り、「デジラボキャンプ」という30名ほどのグループを作成しました。やはり2000人規模のグループとなると、そこで提案やディスカッションはしにくいんですね。キャンプでは、事業会社をまたいで、例えば「拠点間を繋ぐコミュニケーションツールについて」など色々な議題についてざっくばらんに話しあっており、活発なDXの実践の場となっています。

質疑応答(履修率や発展的教育などについて)

Q:カリキュラムの履修率が95%以上を維持できている秘訣はなんでしょうか。

A:まずトップである社長が社員にメッセージを出したこと、自ら率先してDX教育に取り組んでいる姿勢から、「ことの重要さ」が伝わったと考えます。事務局のすべきこととしては、やはり100%受講が当たり前という姿勢で、管理をしっかり行うことでしょうか。必修期間に受講が終わっていないメンバーに対しては都度発信を繰り返しています。また、カリキュラムに無理が出ないよう、本運用の前に選抜メンバーでトライアルを行い、時間や負荷の調整を行ってから運用をスタートしたこともうまく働いたかと思います。

Q:DX教育後の成果や、どのように業務に生きているかを教えて下さい。

A:グループ全社での受講によって、デジタル知識が共通言語化されたことが最大の収穫でした。事業会社ごとのバラつきが、ある程度高さのあるレベルで固定されたということです。特に生産や物流の現場は従来の「改善活動」などの延長でDXも比較的進んでいたので、さらにアイデアや発想の幅が広がり業務に活かせています。

Q:データサイエンティスト教育プログラムとはどのようなものでしょうか。

A:こちらはデータサイエンティストを先生としてお招きし、5人程度のメンバーで半年間行うものです。それぞれが抱えているテーマを解決すること、メンバー自身の能力を伸ばすことの2点をゴールとして設定し、先生と壁打ちをしたり、メンバー同士で情報共有をしたり、宿題を連携してやり遂げたりしながら、課題解決を目指す取り組みです。

まとめ

4つの事業会社をまとめながら、グループ全体でスピーディなDX教育を推進しているニチレイ。社長がまず受講し自ら必要性を説くことで、DXの意義が全社的に自然に浸透した好例と言えます。丁寧なモチベーション施策にも重要なヒントが多く、非常に示唆に富んだお話をいただきました。

アイデミーでは今後もテーマを変えてユーザー会を開催し、情報提供や意見交換の場を設けていく方針です。DX推進にお困りの方やAidemy Business、ユーザー会にご興味のある方はぜひ下記からお問い合わせください。